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「確かにセキュリティーハンターが来ないのを見ると本当に自由に話をしても大丈夫なのは確かみたいですね」
僕が感慨深げに呟くと青年はハハッと爽やかに笑った。
「あんた神経質な人なんだな、せっかくなんだからもっと楽しまなきゃ損だぜ!俺、愛美平って言うんだ、よろしくな!」
愛美 平『あいび へい』と名乗った青年は僕にスッと手を差し出した。僕は慣れない事に戸惑いながらも愛美の手を握った。
「萩野目咎愛です、よろしくお願いします」
「へえ、じゃあ咎愛って呼ぶな!俺のことは気軽に平って呼んでくれ!それと多分歳変わらないだろうし敬語使わなくていいぞ!」
「でも、初対面ですし…」
「んなこと気にすんなよ!腹も減ったし早く行くぞ!」
「あのっ…ちょっと!」
僕は平に腕を引かれて歩き始めた。こんな風に誰かと自由に話をしても許される日がくるなんて思ってもみなかった。
それに、少し強引だけど平には自然と心を開いてしまうような優しさが感じられた。
僕は平と食堂に入って行った。食堂の中には既に僕達以外のカナリアは集まっていて僕達は大慌てで席に着いた。
僕と平が席に着くと食堂内に設置された大型スクリーンにポゥッと光が灯り瀬セキュリティハンターにしては細身のシルエットが映し出された。
一見カエルの様なそれは人型をしており緑色のボディには似つかわしくないタキシードを纏っていた。カエルはゆっくりと口を開くとカナリア達の名前を一人一人呼び上げた。
『ご機嫌麗しゅうございます、カナリア諸君。
私は君たちの案内人を務めるガエリゴと申します。
君たち選ばれしカナリアはこの施設内では囚人という事を忘れて貰うために囚人番号ではなく名前で呼びあってもらいます。
そのために一人ずつ私の方で君たちの名前を読んでいこうではありませんか。
顔と名前を認識してもらうために、名前を呼ばれたカナリアから起立していただきたく思います。
初めに…』
ガエリゴと名乗った不気味な案内人は一呼吸置いてからカナリア達の名前を読み上げ始めた。
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