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『愛美平』『あいびへい』
十一人目に立ち上がったのは僕とさっき知り合いになった平だった。平は笑顔を浮かべ僕の方を見ていた。
『萩野目咎愛』『はぎのめとがめ』
最後に呼ばれたのは僕だった。恐る恐る立ち上がると周りの視線は僕に集まった。身の縮みそうな思いで俯くとガエリゴが言葉を続けた。
『 以上の十二名が今回の参加者となります。皆様にはカナリアとしての自分を忘れてこの三ヶ月間お楽しみいただきたく思います。
今から皆様にはコミュニケーションを取りやすいように腕時計型の端末を配ります、皆様の個人名と連絡先を登録してありますのでそちらで自由に連絡を取り合ってください。
今後の質問等は私、ガエリゴが対応致しますのでよろしくお願い致します。それでは遅くなりましたが昼食が出来ましたのでお召し上がりください。失礼します。』
モニターの発光が消えるとその瞬間にテーブルの上に昼食が慌ただしく並べられた。
配膳をしているのはセキュリティハンターに良く似た機械だった。
「え…こんなの…食べていいんですか?」
思わず心の声が溢れ出してしまうほど豪華なご馳走が並べられ皆はハッと息を飲んだ。 「咎愛!食べようぜ!」
「うっうん…いただきます」
平に促されて恐る恐る目の前のローストビーフに手を伸ばした。手錠のない違和感と久しぶりにしっかりと握るフォークの感覚は不気味なほどに新鮮味があった。
僕の隣の平は周りを気にせずに口の中に食べ物を掻き込んでいた。
「美味しい…」
他のカナリア達も料理の味に翻弄され目を丸く見開いていた。平だけは我を失ったように食事に夢中になっている。
僕はサラダとライスを平らげるとワイングラスに注がれたオレンジジュースを飲み干した。
「ご馳走さまでした」
目の前の皿が空になると食器を下げに忙しなくマシーン達がやってくる。
全ての食器がなくなるとマシーン達は僕たちに腕時計型の端末を配り始めた。ガエリゴが言っていたコミュニケーションを取るための端末だろう。
皆がそれを貰うと同時に手首に巻き始める中、僕は制約が気になって端末をポケットにしまった。
「咎愛は付けないのか?俺が付けてやるか?」
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