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「ううん、大丈夫自分で付けるよ」
もし、平に見られてしまって死んでしまうなんてことになれば呆気なさすぎて死にきれない。
平は僕の不自然な行動に首を傾げていたが、深く追求はしてこなかった。取り敢えず制約を破らずに済んだことは確実だ。
一息ついたのも束の間に皆は食堂から部屋へ戻って行った。数人は食堂に残り何やら雑談を楽しんでいるようだった。
カナリア同士が自由に会話をしているという不思議な光景に僕が見入っていると平に肩を叩かれた。
「咎愛?この後どうする?予定ないなら一緒に行動しようぜ」
平の提案に僕は首を縦に振った。一人でいるより誰かといた方が安心だし、それに皆はカナリア同士ということもあり緊張感も漂っていた。
不思議と平には警戒心を解いている自分がいて、平と行動することが身の安全に繋がるような気がしていた。
「特に予定はないから平と行動するよ、その前に部屋に戻ってもいいかな?歯磨きとかしたいし」
「そうだな、じゃあ咎愛の用意が整ったら俺の部屋に来てくれよ」
「うん、わかったよ」
「あんまり待たすなよ!じゃあ俺先部屋行くわ、またな」
平と一旦別れた後、部屋に戻った僕は痣のある手首に腕時計型の端末を付けて袖を被せた。
平と離れる時間が欲しかったのはこの為だった。
平に嘘をつくのは倫理観に反するような気がして歯磨きをしてから部屋を出た。平の部屋は僕の部屋と対になる場所にあった。
僕は恐る恐るノックをすると部屋の中から平の返事と慌ただしく平自身が部屋から姿を見せた。
「よっ、まあ入れよ!変なことはしないから安心しろよな」
平は悪戯に笑うと僕を部屋に招き入れた。平の言う変なことが何かは分からないけど取り敢えずお邪魔する。
「失礼します」
平の部屋は僕の部屋と対になる造りになっていた。
簡素なベッドの上にはノートやカメラが点在しているのが目に入った。
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