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「まあ、座れよ」
平が僕に椅子を差し出してくれて椅子に腰掛けて平を見つめた。
「なんだ?」
見つめられた平は不思議そうにこちらを見ている。
「少し気になったんだけど、そのカメラは?」
僕が質問すると平はこれか、と言いながらカメラを僕に手渡してきた。
平の手から渡ったそれは小さいながらも重みがあってレプリカではないことは感触から確かだと分かった。
「本物のカメラなんて触ったの初めてかも」
「そうなのか?まあ、ここに居たら触る機会もないけどな」
「ありがとう、返すよ」
僕の手から平にカメラが渡ると平はカメラの電源を起動させた。
「咎愛は悪い奴じゃなさそうだから話すけど、俺の制約はここで起こる出来事を一日に一枚、写真に収めることなんだ」
「写真に?」
「よく分かんねーけど従うしかないから今日中にカメラを請求したってわけ」
「確かに従うしかないよね…だけど平、僕と平はさっき知り合ったばかりなのに僕のことを簡単に信用して大丈夫なの?」
「なんつーか、咎愛にはカナリアっぽさがない気がするんだよな、だから勝手に信用したくなるんだ」
屈託のない笑みを浮かべながら話す平を見つめているとここが監獄だということを忘れてしまいそうになる。
「ありがとう、僕も平なら信用出来そうだよ」
「なあ、咎愛は何でここにいるんだ?」
平は急に真剣な表情をして僕に向き合った。
一瞬の緊張感が走る中、僕はゆっくりと口を開いた。平は僕に制約を話してくれたし、平に嘘を付く気もなかった。
「分からないんだ…気が付いたら牢にいて…気が付いたらこのゲームに参加することになっていたんだ」
「記憶喪失ってことか…?」
平は僕の言葉を疑う様子もなく顎に手を添えて考え始めた。
「だとすると、咎愛は保護対象なのかもな」
「保護対象?」
聞いたことのない言葉に僕が首をかしげると平は納得したように頷きながら言葉を発した。
「極度の悲惨な現場に居合わせて精神的におかしくなったりしないように保護してる奴らのことだよ、事件のケースによっては二次被害を防ぐために記憶を消したりしてるって話を聞いたことがある、それなら咎愛の話も説明つくだろ?」
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