カナリアの僕の日記

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確かに平の話が事実なら辻褄が合う。それに、犯罪を犯していないのなら僕の倫理観は崩れていないということになる。 「咎愛は犯罪を犯しそうにないもんな、咎愛に聞いといて話さないのもなんだから話すけど、俺は潜入してきた先輩を探してここに来たんだ、そしたら情報漏洩防止の為に捕まってさ、毎日暴れてたらこうしてここにいるってわけだ」 「そんな理不尽な理由で…先輩は見つかったの?手がかりは?」 平は肩を落として困ったような表情を浮かべた。平の顔を見るだけで深く聞かなくても返答は分かった。 「そっか…でもきっと平みたいに無事でいると思うよ、ここから出て見つけないとね」 「見つかるといいけどな…」 どこか儚げに遠くを見つめる平に遠慮がちに質問をしてみる。 「平、聞きたいんだけど、何でわざわざこんな場所に潜入する必要があったんだ?」 「そんなの決まってるだろ、秘密をばらして世間に知らせるのが俺たちの仕事だからだよ!ここには沢山の噂があってな、まず有名なのは未だに廃止になったはずの死刑が行われていること…それと飼われているカナリアがいること」 「飼われているカナリア…?」 「そう、死刑を執行する為に飼われているカナリアさ、そいつらが死刑囚を好き勝手に殺せる権限を与えられているって話さ、そいつらの特徴は…」 一番重要なところで口を閉ざした平をじっと見つめていると平は僕に視線を合わせて柔らかく笑いかけてきた。 「そいつらは囚人番号が五十番代から始まっているらしい、証拠に囚人番号五十一番の釘井アリスは残虐な死刑のやり口で有名だ。」 「釘井アリス?」 僕が首を傾げていると平は大きな溜息を一つついた。まるで、その名前を呼ぶこと自体を禁忌だというような態度だった。 「お前、本当に記憶ないんだな…釘井を知らないカナリアは多分いないんじゃないか?咎愛みたいに記憶がないやつを除いての話だけど」 「そんなに、有名なんだね」 「まあな、釘井に殺されるくらいなら自殺した方がマシだって別のカナリアからよく聞かされてたよ」 「へぇ…こわいな」 「まあ、ここにいれば死刑はないだろうがいつどこで殺されてもおかしくないからな、気を張ってないとな」
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