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「二人とも良いところも悪いところもあるよね、日暮さんは良い風に見ると素直だし、九条さんは自分を魅せることが上手だし、なかなか迷っちゃうね」
「黄瀬さんの大人な解答に免じて今日は深追いしないでおくよ」
「黄瀬さんありがとう助かった」
僕は手の平を合わせて黄瀬さんにお礼の意味を示すジェスチャーを送った。
黄瀬さんは笑顔で僕に会釈を返してくれた。
僕等の会話が途切れた頃、香ばしい香りと共に僕等の朝食が運ばれてきた。
食事から上がる湯気を見るだけで幸福感を味わってしまうのは、きっと僕がカナリアだからなのだろうと思うとちくりと胸が痛んだ。
「よしっ!くおーぜ!」
勢いよく朝食を頬張る平を横目に僕もトーストを手に取った。食事中はつい制約を忘れてしまいそうな自分との戦いだった。
少しでも手首や足首を見られてしまうと制約違反で死んでしまうかもしれない。
そんな死に方は嫌だし、それに、平の優しさを無駄にしてしまう事になる。
平は毎日僕の制約に気を遣って少しでも服が捲れ難い食事を選んでくれている。
この二週間を平はと共に過ごして来たけれど、平はカナリアとは思えないほど優しくて真っ当な人間だ。そんな平に頼りっぱなしの僕は情けないとしか言いようがない。
今日も平の優しさに甘えながら一日が始まろうとしていた。
僕がトーストを頬張りながら平の方をちらりと見るとこちらを見ていたであろう平とパチリと視線があった。何故、僕を見ていたのだろうと首を傾げると
「なぁ、咎愛って今何歳なんだ?」
唐突な質問に戸惑いながらも僕は平に答えを返した。
「僕は今、十九歳だよ、でもいきなり何で?」
「特に理由はないけどさ、ちなみに俺は、今二十一歳なんだ、本当お前って弟みたいで可愛いよな」
「可愛いってそんな事ないよ、平はお兄さんっぽいっていうか、お母さんみたいだよね」
「お母さんっ!?せめてお父さんにしろよな!」
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