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「だって気が効くし、優しいし」
「おいおい、恥ずかしいだろ!俺がいい奴だってバレるからそれくらいにしとけよな」
僕等が冗談を交わす中、黄瀬さんがポツリと呟いた言葉は僕等の耳にしっかりと響いた。
小さな、普通なら聞き取れないくらいの声なのに、その言葉には不気味な重みが感じられた。
「お母さん…」
「ん?黄瀬さん?大丈夫?」
平が黄瀬さんに声をかけると、黄瀬さんは慌てて愛嬌のある笑みを浮かべた。
こうして今朝も無事に食事を終えた僕は空になった食器を元の位置に戻して二人が次の行動に移るのを待っていた。
「ご馳走様でした! 」「いただきました」
二人で声を揃えると平の方に視線をやって平の指示を待った。この二週間、平の行動に合わせて僕は動いていた。
だから僕は今日もこうして平を待っている。
「なあ、今日は色々聞き込みをしようと思うんだ!咎愛はいいとして黄瀬さんは何か予定ある?」
「私はこの後、植物園に行くつもり」
「そうか、じゃあ俺たちは二人で行動するよ」
「うん、またね」
黄瀬さんはゆっくり立ち上がると笑顔で手を振りながら歩いて行った。
僕達も立ち上がって食堂の外を目指して歩き始めた。先程まで食堂にいたカナリア達はいつの間にか数人しかいなくなり食堂には静けさが訪れていた。
「なあ、咎愛?咎愛は黄瀬さんを信用していいと思うか?」
食堂を出て、人目がないことを確認した平が僕に耳打ちしてきた内容は自然と疑問を抱く内容だった。
「平は黄瀬さんを信用してないの?」
「ハーフハーフかな、でも黄瀬さんを見てると普通じゃないことはすぐ分かるけどな」
「えっ?黄瀬さんが普通じゃないって、どうして?」
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