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そんな僕の様子に気付いたのか平はこちらを見て笑顔を作った。
「よし!立ち話も何だし行くか!目的地は決めてねーから見つけた人に声かけていこうぜ!」
「分かったよ」
「此処から一番近いのは図書室か…誰かいるかな?」
「図書室なら誰かしらいるんじゃないかな?僕も部屋で読む本を借りたいから少し時間を割いてもいいかな?」
「おう!」
僕達の向かう図書室は食堂の前の廊下を進んだ端にある。僕たちが廊下の半分まで歩いたところで黒髪を二つのお団子にした可愛らしい女の子と若い男性が手を繋いで歩いている姿が見えてきた。
段々に近くシルエットがはっきりしてくると月華兎耳ちゃんと芙蓉夏彦さんだとわかった。
「おはようございます、芙蓉さんに月華ちゃん」
「おはよー!」「おはようございます」
月華ちゃんと芙蓉さんは平と僕に挨拶を返してくれた。元気よく挨拶をしてくれた月華ちゃんの頭を優しく撫でる芙蓉さんの姿は父親の雰囲気を纏っていた。
月華ちゃんに愛おしそうに触れていた芙蓉さんは僕達の方を見据えると口を開いた。
「愛美君に萩野目君は何処かに行くところかな?」
「はい、図書室に向かうつもりです」
平が淡々と答えると芙蓉さんはふっと柔らかく笑ってから僕達に返答した。
「そうかい、僕達もさっき足を運んだんだけど、ここの図書室は色々な本があって驚いたよ、きっと二人も気にいると思うよ」
「そうなんですか、俺たちはまだ図書室には行ったことなかったから嬉しい情報です、後一つ聞きたいんですけど、図書室に誰か他の人はいましたか?」
「んーっと僕達の他には櫓櫂さんがいたよ」
「櫓櫂さんかあ…」
平の呟きを聞いた芙蓉さんは笑みをこぼした。平が櫓櫂さんを渋る理由はカナリア達に共通していた。
「まあ、僕達が図書室に入った途端帰ってしまったけどね…」
どこか寂しげに話す芙蓉さんを慰めるように月華ちゃんが芙蓉さんを見つめていた。芙蓉さんは視線に気づくと優しい笑みを月華ちゃんに送った。
「月華ちゃんみたいにカナリアじゃない子もいるのにね…何だか無差別なのは悲しいよね」
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