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「ありがとう、平といると安心するよ」
「おいおい、どんな時でも気ぃ抜くなよな、俺だって百パーセントは信用するなよ、何があるか分かんねーからな!なんてなっ、」
冗談ぽく笑う平を横目に僕は考えに耽っていた。
保護対象、犯罪歴のないカナリア、事件と関わってしまい何らかの精神的影響を受けてしまった存在。
月華兎耳ちゃんと芙蓉さんは初日からずっと一緒に行動している。
二人が別々に行動している姿は見たことがない。
芙蓉さんは平の言う通り、月華ちゃんを利用する為に近付いたのか、それとも保護対象という不確定要素を除いても、幼く狙われやすい月華ちゃんを守る為に側にいるのか僕には考えても分からなかった。
だけど、幼い月華ちゃんには芙蓉さんのような頼れる大人が必要なのかもしれない。
僕にも平が必要だ。
信じたい…。
芙蓉さんが月華ちゃんを守ってくれると。
僕にはそれしか出来ないから。
「よしっ行こうぜ!」
平の発した声で僕は我に帰った。
不安なのかもしれない。自分の存在が、保護対象という肩書きが。
本当に僕は罪人(カナリア)ではないのかと。
「ねぇ平」
「なんだよ咎愛」
先を軽快に歩いていた平は僕の方を振り返りながら笑顔を浮かべた。
「僕は何でここに来たのかな?月華ちゃんを見ていたらそう思ったんだ、月華ちゃんはどうしてここにいるのかな、なんて」
僕の問いに平は顎に手を当て少しだけ考えてから口を開いた。
「そりゃあ、なんか事件に巻き込まれたか、事件を起こしかけて失敗したとか、自殺しようとした、とか保護対象になる理由は山程あるけどな」
「未遂も保護対象になるんだ…」
「ああ、保護されて記憶を消されちまえば普通の感性に戻るやつもいるからな、まぁ、元からおかしい奴は対象外でカナリア扱いにされるようになってる」
「そうなんだ…」
「まぁ、お前は普通に話しもできるし、性格も悪くないし、そんなに考えすぎんなよな」
「うん!ありがとうなんか元気出た」
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