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カナリアの僕の日記
午前五時、起床のチャイムで目を覚ます。眠たいなんて戯言を零したらどうなるかなんて、とうの昔に知っている。
近くの部屋にいたカナリア達は日に日に入れ替わっていき、最近では誰も居なくなってしまった。
今日も重たい体を起こすと監視システムが内蔵された色味のない殺人マシーンが僕のガラス張りの個室の前に食事の乗ったトレイを置いて音もなく去っていく。
食事の時や刑務作業、生活物資の支給の時のみこの個室のドアは開いた。
ドアから飛び出そうとした時点でドアから降圧電流が流れ、死に至らしめるシステムになっているようだ。
僕の個室の向かいの人はそうやっていなくなった。
僕がいつからここに来て、何年経つのかなんて全く分からない。ただ分かるのは自分の名前と今日も生きているという感触だけだ。
この施設は監視システムが内蔵されている先程の殺人マシーンがカナリア達を管理している。
マシーンの正式名称はセキュリティハンターと言うらしかった。
僕の手には鋼鉄の手錠が嵌められ、思うように動けないが慣れとは恐いもので今では気にならないようになっていた。
それだけ長い期間、ここにいるということなのだろう。
『男性、十九歳、萩野目 咎愛(はぎのめ とがめ)健康状態に問題なし、今日の作業は中庭の雑草処理、刑務官同行有』
食事を済ませると同時に僕のガラス張りの個室の前にセキュリティハンターが現れる。
ゆっくり立ち上がるとセキュリティハンターに連れられて歩き出した。
「すみません、質問をしてもいいですか?」
セキュリティハンターに何かを訴える際は自分の要件を端的に伝えなければいけない。
少しでも反抗の意志が見られると恐ろしい罰が待っている。
僕の声に無機質な機械音声が返答をする。
『質問を許可する』
「失礼します、どうして今日の作業には刑務官同行なのでしょうか?先日は単独作業でしたので刑務官の手を煩わせる必要はないのではないかと」
『その質問には答えかねる、作業内容については機密事項だ』
「失礼しました」
理由はよく分からなかったけどこれ以上踏み込む事の方が恐ろしい。
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