82人が本棚に入れています
本棚に追加
カナリアからランダムで選出されるとは聞いていたけどまさか自分が選出される日が来るなんて…。
絶望的な恐怖に体中が震え上がった。
はっきり言ってしまうと、このゲームに選ばれた時点で命の安全は失ったようなものだ。
恐怖を目の当たりにした僕の手はカタカタと震え、鋼鉄の手錠が鈴のようにジリジリと音を立てた。
ここにいても未来はない。
だけど死ぬよりはマシだと、そう思って生きてきた。
なのに…。よりによって、カナリアのデスゲームの参加券を得たなんて…。
僕の中にある全ての感情が絶望に変わっていくのを感じた。
この日の夕食は今までで一番美味しくなかった。
食事のトレイをセキュリティハンターが取りに来る前に眠りについた。
翌朝、いつものように五時に起床し重たい体をゆっくりと起こした。
昨日の作業の跡なのか爪に黒くなっている箇所がいくつか見られた。
きっと雑草を取っているうちに入り込んでいたのだろう。
爪を見つめているうちにセキュリティハンターが朝食を運んできた。
今日はいつもの簡素な和食に栄養ゼリーが付いていた。
栄養ゼリーなんていつぶりに口に入るのだろう…。
思い出そうとしても記憶が曖昧で分からなかった。
朝食を済ますと顔を洗って歯磨きを済ませた。
手錠の嵌められた手で自分でも器用なほどに日常生活が送れるのは僕の刑期が長いことを表しているのかもしれない。
セキュリティハンターはいつものように端的に予定を告げるとすぐさま去って行く。
こんな毎日を過ごすこと一ヶ月くらいだったのだろうか…。
変わりばえしない毎日にイレギュラーは突然訪れた。
最初のコメントを投稿しよう!