カナリアの僕の日記

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いつものようにやって来たセキュリティハンターにいきなり手錠を外され、ついてくるように命じられた。 いきなり解放された手首はまるで別の手にすり替わったように感じるくらい解放的だった。 いつもなら作業が始まる時間に僕がいたのは広いホール状の建物の中だった。 白を基調とした質素ながらも清潔感のあるホール内に僕を含め総勢十二名ほどのカナリアが目に入った。 皆、手錠はしておらず壇上の刑務官を見上げていた。僕はこの状況に激しい不安を覚え始める。 刑務官の重たい口が開かれると僕の不安は更に煽られた。 「カナリア諸君、ここに集まってもらった意味は理解できているな?君達は皆、カナリアのデスゲームに選ばれた特別なカナリア達だ。三ヶ月間生き延びるだけで君達は幸せを手にできるのだからな。これからカナリアのデスゲーム開催に当たってルールを説明する。」 誰かが生唾を飲む音が耳に伝わって来た。緊張しているのが僕だけではないことに安心感を覚えた。 そんな僕達には構わず、刑務官は刻々と話を進める。 「ルールは簡単だ、まず忘れないでもらいたいことは君達は勝者だということだ。 施設内を自由に行動する権利がある。 それぞれの犯罪歴についての関与は当人が死んでから初めての告知とする。 当人同士での犯罪歴についての会話は当人達の責任で行なってもらう。 そしてこのゲーム中は君達カナリアは自由だ。 殺人や恋愛…ここに来る前のように自由に振舞っていいのだ。 私からの説明は以上だ。 君達には今日、この後からカナリアのデスゲームを開始してもらう。 施設への移動はセキュリティハンター達に一任する。 それでは私は失礼する。」 壇上から刑務官が降り立つと不気味な静けさが僕達を包んだ。 私語が聞こえようものならすぐさま存在をも消されてしまいそうな、そんな空気が漂っていた。
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