終章

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「偉大なるタラニス!」 力のかぎり叫ぶ! 「雷鳴であり、炎であり、死を司る偉大なる竜よ!」 突っ込んできた敵兵を豪快に切り捨てる。 「我が願い聞き届けるなら、空巡る大車輪となって我ら守護せよ!」 一瞬の沈黙が訪れた気がした。 その後戦場すべてに響く巨大な咆哮、パルム兵には恐怖を、エスメ兵には勇気を与える咆哮が響いた。空に太陽を隠して余りある巨躯。タラニスが空を旋回し再び咆哮した。 「騎士よ。願い聞き届けたり。」 パルム軍は思わぬ竜の登場に恐慌状態に陥った。この時ハークス王は 「偉大な竜が加勢に来たぞ!すすめ!」 と総攻撃を指示したと史書は記す。 戦いの趨勢は一気に決着した。 総崩れになったパルム軍に竜は一撃後ろ足の鉤爪で攻撃した。それだけで良かった。ある者は正気を失い。ある者は武具を打ち捨て命乞いし、またある者は半狂乱で逃げ続けた。 ハークス王は一昼夜追撃戦を展開。パルム軍を駆逐し、敵軍再起の芽を摘んだ。これで当分戦う気など起こさないだろう。 セオは傷だらけながらも戦い抜き生還した。 戦いのおわった平原で、竜と王は会見した。 「車輪の意匠であなた様を顕彰し、”守護竜王”の御名を贈ります。」 「御意、王の末代まで国と民を守護しよう。」 王国は領土を拡張するたびに、国の境界にタラニスの象徴である車輪の記念碑を作るようになる。エスメ王国は守護竜王の王国。略して守護王国と呼ばれるようになり、200年後大陸を平定し、聖王国の再来かくやという繁栄の時代。「白の時代」が現出する。 セオの家系は代々竜騎士の系譜と呼ばれ、畏怖と尊敬を得ていたが、250年後血統が断絶する。それからまもなく守護王国の時代も静かに終わる。
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