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数十騎いたはずだが、逃げきる度にはぐれてしまった。馬も失い今や徒歩。陛下と私だけになってしまった。森に入ってみたものの方角も分からずあてなく体を引きずった。
「陛下しっかりなさってください。追撃は振り切りました。」
「・・・そうか」
王はひどく疲労されている。肩を貸さなければ歩くこともままならない。できることならどこかで体を休ませなければと思うがいい場所がない。
「セオ・・・すまないな。」
「陛下、詫びないでください。なんとしても王都へ帰りましょう。」
陛下を元気付ける言葉を投げかけたものの私も倒れそうだ。つけ慣れた鎧が鉛のように重い。使い慣れた剣がただただ重かった。しかし私は決して挫けるわけにはいかない。
私の命を捨ててでも陛下を救うのだ。王都へ送り届けるのだ。
しばらく休める場所を探した。日が暮れつつあり、疲労が限界を超えつつあるそんな時だった。巨大な岩山の麓にある巨大な風穴をみつけた。風が吹き上がり、小川が流れ出ている。ここの奥なら陛下を休ませられそうだ。
私は陛下を風穴の奥へ運び。陛下と私は小川の水を飲み渇きを癒した。そして陛下に休息を即した。
「すまないな・・・すこし・・・やすむ」
陛下は身体を横にすると、寝息を立てて眠りについた。
私は陛下の寝顔を見つめていた。私も疲れているが、限界まで疲れているが。陛下が目覚めるまで護らねばならない。それが親衛騎士であり、私という騎士のプライドだ。
私は剣をつかんで、風穴の入り口に立ち。剣を正面に構えてから地面に突き立てた。
「我ただわが陛下を護らん。如何なる者も立ち入らせず。」
自然と声が漏れた。
日が暮れて月が天高く輝き、月明かりが周りを照らした。
周りを改めて見渡すと、風穴の前には広場のようになっていた。
その時だ。
月をさえぎる物体がひるがえって風が舞った。そして風穴前のひらけている広場に着地した。巨大な物体は風を巻きおこし、やがて月明かりがその体を照らす。
全身を菱形の鱗に包まれ、巨大な羽根を持ち先端が鋭利な尻尾が揺れる竜であった。竜は鋭く吊り上がった紅い瞳が私を見下ろしている。私は微動だにしない。
「騎士よ。汝の声を聞いた。その場は我が休息の場。汝の主を起こしてくれぬか。」
頭の中で厳かな声が響いた。
「尊敬すべき偉大な竜よ。我が王が目覚めるまで許してくれないか。」
私は竜に尊敬の念。上位種へ畏怖の念を込めて答えた。
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