終章

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『ハークス王無事発見』 この報が王都にもたらされたのはパルム平原の戦いの4日後のことだった。混乱の極みにあった王都の宰相以下文官武官たちはひとまず胸をなでおろし、王の帰還を切望した。 しかし無事と言っても王と騎士の実際は、体力の消耗、全身の衰弱は激しかった。救助した捜索隊はひとまず敗れた軍の再編を進める野営地へ運んだ。 旧パルム領から馬で1日ほど北の位置に作られた野営地は元々は平原の戦いの為の拠点であったが、現在は王都からのわずかな増援と敗残部隊で構成される対パルム防衛部隊の再編成拠点として機能している。 ハークス王は拠点に入る際気丈に振る舞い。兵を労い。感謝の言葉を述べた。拠点全体は王の生還を喜び、士気は上がった。しかし天幕に入るとハークス王はばったり倒れ、しばらく動けなくなってしまった。この状態はこの後3日続き、厳重に秘匿された。 セオもまたハークス王と同様の状態で捜索隊に発見され、野営地に運ばれた。ただし彼は驚異的回復。温かい食事を食べるほどに回復して見せた。周囲から王を護った事への賞賛を受けたものの。主力騎士団と精鋭の親衛騎士団はほぼ壊滅状態であることを知る。多くの戦友を失ったショックは小さくなかった。 ハークス王の元に王都からの書簡が届き、やり取りが活発になったのは、王が野営地に入って4日目からだった。この頃には起き上がり、会話をし、策を練るところまで回復していた。情況は予断を許さない。 まず旧パルム連合軍のエスメ領内侵攻への備え。現在野営地にいる戦力ではすべてが不足している。いざ戦いになれば足止めになるかならないかと予測される戦力だ。しかしここでパルムを奪還しなければ、今後の抑止力にならないことも予見される。黒の時代である。舐められれば、即潰される。 もうひとつはエスメ王国を取り囲む周辺国が侵攻してくる危険だ。東西南北から同時侵攻されれば主力を失っている現状持ち堪えられない。 これには王都の策士達がここぞとばかりに百計を案じた。周辺国同士を疑心暗鬼にさせる偽手紙を出せるだけ出した。受け取った君主、大臣たちは偽手紙だとわかっていても不意に心にわずかながら疑いが生まれる。「もしかしたら・・・、万が一・・・」策士たちの努力の結果、周辺国の足並みを乱し、混乱を生んだ。こちらは思いのほかうまくいった。 時間稼ぎはできた。
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