母胎

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1ヶ月前やった。高校時分からの友達・ヨシタカが死んだ・・・。弱いモンいじめが嫌いで権威とかに従えず、融通の利かん奴やった。 葬式に出るため何年ぶりかで大阪へ帰って、もう一人の友達・珠樹と宗右衛門町の実家のスナックで精進落としをした。 「この店変わらんなあ、オバチャン」  珠樹は言うてくれたけど店はやけに古ぼけて、オカンもかなり婆さんになってた。 「基(モトイ)が東京でエラなって  オバチャンも嬉しいやろ?  40で国立大学教授やで!」 「ありがとう、タマキちゃん。  嬉しいわあ、この子のお父ちゃんも  偉かったん!」 それはオカンの十八番。出世のために自分を棄てて他の女と結婚した男を怨みもせんと『偉い、賢い』 と言うて俺を独りで育ててきた。 嫁はこのオカンの批判はせえへん。 でも、休みであっても『孫の顔を見せに 行こう』とも言わへん・・・。 珠樹が帰ってから馴染みのオッサンらが来てしこたま飲んだ。 二日酔いの朝、起きたらキツネうどん。関西風の薄い味。客とヘベレケに(泥酔)なった翌朝も朝飯と弁当なしなど一度もなかった。 「やっぱり似てるなあ、  アンタの子供の時分に」 昨夜携帯の待ち受け画面にしてやった冬馬を何度も見て、 「ゆっくり食べや」 熱い茶なんか出しよる。 (何年も顔出さん息子に文句も言わん、  ヨシタカも損な奴やったけどオカンもや) 「汗出たわ」 ごまかし笑いしてタオルで涙を拭いた。
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