2人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
「つまり、タイムパラドックスの危険性があるから私に教えられることは限られているのね」
「うん、本来わたしだけが時間跳躍を繰り返して、他の人は以前の時間軸の記憶を持たないはずなんだ」
あの後何回か時間跳躍を繰り返し、私は少しずつ輪の行っていることの全容を理解してきていた。
「なのに私は輪と一緒に以前の時間軸の記憶を持っていると」
「だから、二人がそれぞれ動くとタイムパラドックスが発生する恐れがあるんだ。もっとも、利香は百七十一秒じゃほとんど行動できないだろうけど」
そういえば、私が三分弱の時間を繰り返す間、輪はどれだけの時間を繰り返しているのか。世界を救うための行動を起こしているということは、数分間というわけではないだろう。
目線を時計に落とす。もう大体の時間感覚は掴んでいた。
「そろそろね」
「じゃまた。次までに少しでも前に進んでおくよ」
次は輪の繰り返している時間について聞こう。そう思いながら、私は意識を世界に委ねた。
最初のコメントを投稿しよう!