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「超えた、超えたよ、輪!」
嬉しさのあまり輪の手を握ってはしゃぐ私を見て、輪もやっと表情を崩す。
「そっか、ついに超えたんだ」
「これでやっとゆっくり話せるのよね」
「うん」
ついに訪れた瞬間に、この時が来たら聞こうと思っていたことが全部頭から飛んでしまう。何から聞こうか懸命に考えてる私を制するように、輪が口を開く。
「じゃ、ずっと伝えてなかった私の目的から話すね」
そうだ、それが私の一番聞きたかったことだ。これが聞けないから私は何も行動することができなかった。
「これから数年後、とある日本の准教授が論文を発表するんだ」
輪の声のトーンがいつもと違うことに私は以前にもどこかで抱いた違和感を覚える。だが今は違和感を気にする時ではない。私は輪の説明に意識を集中する。
「その論文自体はごく普通の人工知能による将来予測に関するものだったんだけど、その理論を応用したある組織が時間跳躍技術を完成させてしまう」
人工知能による将来予測。私の研究室と同じテーマであることに私は背中にゾクリとしたものを感じる。
すると、私の感覚を察知したかのように、輪が懐から拳銃を取り出す。
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