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「でも」
「すぐには信じられないよね。でもこれが現実なんだ」
そう話す輪の目を見て、私は彼女が嘘や出まかせを言っているようには思えなかった。そして、なぜか私はその現象をすんなり受け入れることができていた。元々その手のSF小説が好きだからだろうか。人間の脳は想定外の事象が起きた際に、知識の中の架空の世界をイメージすることでその事象に対応しようとするという説もある。
「なんでこんなことが起きているの?」
他にも知りたいことは山ほどあったが、咄嗟に出た言葉がこれだった。
「わたしは、世界を救うために時間跳躍を繰り返している。そして、やっと利香。あなたと出会える世界軸へとたどり着くことができた」
世界を救う。時間跳躍を繰り返す。そんなことを言われ、湧き上がる疑問に次の質問を絞り込めない。先に輪が次の言葉を発する。
「そろそろ時間だと思うから、次は時間を計っておいて。何秒話せるかで何から話していくか私も考えるから」
「わかった……」
輪の話しぶりだと私達がこうして話していられる時間も決まっているのだろうか。次に質問したいことを頭の中でまとめようとした時。
激しい眩暈と共に視界がぐにゃりと歪み、そして振動と共にホワイトアウトする。
気が付くと、私は一人タブレットを眺めていた。
すぐに時間を確認する。
十三時二十分〇五秒。これが、時間跳躍の開始を告げる時間だった。
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