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二度の時間跳躍を経験したことで、私は腹を括りこれを現実だと認識することに決めた。
タブレットの時計を睨みつつ、今度は周囲に目を配るのを忘れない。すると、公園の入り口から女性が走ってくるのが見えた。輪だ。どうやら跳躍できるのは時間だけで瞬間移動ができたりするわけではないらしい。
「利香、久しぶり。ってまでも時間は空いてないか。計ってくれてる?」
「ええ、時間が戻ってから今で百秒くらいね」
私は要点のみを端的に輪に伝える。今までの経験上、これから輪と話せるのは一分くらいのはずだ。
「一つだけ確認させて。輪は『世界を救う』ために行動しているって言ってたわね」
「うん。これがウソを付いている目に見える?」
「それってウソを付いている時に言うセリフよね」
そう言葉に出しながらも、私は輪が嘘は付いていないと確信していた。一周目の時間軸、初めて見たときの澄んだ瞳は今も脳裏に焼き付いている。
私はタブレットの時計に目を向けつつ話す。
「わかった。貴女を信じるわ。次からは、詳しいことを教えて。約束よ」
「もちろん! ありがとう、利香!」
輪のとびきりの笑顔に、一瞬時間を忘れて見入ってしまう。だが間を空けずに襲ってくる眩暈に、吐きそうになりながらも時計を凝視する。
十三時二十二分五十六秒。この百七十一秒間を、これから繰り返していくことになるらしい。
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