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いつものように公園の入口を見ながら私は待つ。胸が高鳴っているのが自分でもわかる。
そして輪がやってくる。その表情を見て、胸の高鳴りが強くなる。
「たぶん、これで次の段階に進めるはずだよ」
息を切らしながら走りこんできた輪がVサインを出す。
あれから何十回かの時間跳躍を繰り返し、ついに輪が一つのキーとなる出来事をクリアできたらしい。前回の時間軸で、手掛かりが見つかったと輪は話していたのだった。
「良かった……」
私は安堵の息を漏らす。私にとってはたった百七十一秒、でも輪にとっては十数日間の繰り返しがやっと次の段階へ進む。
「今まで話せなかったこともこれで話せるのよね」
輪の話だと、世界軸を変えるために私に対して話せる情報には制限があった。それが先へ進むことで話せる範囲も増えるという。
「うん、そうだね」
そう答える輪の表情がいつもと少し違う気がして、私はうまく言葉にできない違和感を感じる。
その時、いつもの眩暈が私を襲ってきた。
歪んでいく景色の中、輪の驚いた顔が脳裏に焼き付いていた。
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