171秒後のあなたを待って

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*****  結局、私は輪の助けになることはできなかった。  約七十秒の時間を何度も輪と議論を重ねたが、肝心の輪の行動原理、何を目標に行動しているかが私に教えられない以上、私も助言のしようがなかった。 「ただ待つのってこんなに辛いんだな……」  一人きりの公園で空を仰ぐ。  小説や映画の主人公なら、世界を変えるために色々と行動を起こせる。今の輪がまさにそうだ。  そしてヒロインなら、そんな主人公の助けになるような助言を送るはずだ。  私は主人公にもヒロインにもなれない。ただ七十秒間主人公の話を聞くだけの端役に過ぎない。くやしくて自然と涙が零れる。だから、輪が近付いてきているのに気付かなかった。 「利香、お待たせ」  私は涙を悟られないよう、あえて自然と輪の方を振り向くように努めた。だが、振り向いたときの輪の表情を見て、一気に涙は引いてしまった。 「輪……」 「これで、いけるはずだよ」  輪の表情を見れば、その言葉だけで何を意味しているかは十分だった。初めて会った時の澄んだ瞳を思い出す。私はただ無言で頷き返した。  あれだけ短い時間の中でできるだけ話したいと思っていたのに、今は何も言葉が出ない。輪も無言で立ち続けている。永遠のような時間を輪と見つめ合う。 「利香」 「……そうだっ」  輪に名前を呼ばれ、我に返った私は時計を見る。  十三時二十三分〇三秒。  百七十一秒の壁を、超えた。
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