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171秒後のあなたを待って
大学近く。人気のない、いつもの公園。
その日も私は講義の合間の時間を大学近くの公園で過ごしていた。手にしたタブレットで海外の論文を読む。中々に面白い論文だったので、私は読むのに夢中になっていて足音が近付いているのに気付かなかった。
「こんにちは」
急に声を掛けられ、驚いて顔を上げると、そこには私と同年代くらいの一人の女性が立っていた。
「水無瀬利香(みなせ りか)さん、ですよね?」
「は、はい。あなたは……」
おそらく初対面だと思う目の前の女性に自分の名前を言われ、私は間の抜けた返答をしてしまう。女性は短く切り揃えた髪と深く澄んだ意思の強そうな目付きから、快活そうな印象を受ける。
すると、その快活そうな表情が不意に緩む。
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