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第五章 大焦熱地獄
七番目の大焦熱地獄に来た。
殺生、盗み、淫行、酒、嘘、邪見に加えて尼僧や少女強姦などの罪がないと来れないらしい。
あたしの彼氏こんなとこまで落とされたのか。全く何したんだよ。というかこれ以上の罪を犯したシュウのお母さんってどうなってるんだ。ものすごい毒親なのか?
大焦熱地獄は今までの地獄の集大成のようなところだった。人間は殴り合い、針山があり、大きな窯があった。足場はすべて溶岩だった。あたしもシュウもボロい服は着ていたものの裸足だったから、熱くてしょうがない。どうにか逃げ込めるところを探しているとシュウが何か見つけたようだ。
「階段見つかった?」
「この腕、レイコのタトゥーと一緒だよ」
シュウが、地面に落ちていた人間の腕を指差した。たしかにあたしと同じタトゥーが入っている。ということは……
鬼が「活!」と叫ぶ声が聞こえた瞬間、落ちていた腕に肉が集まってきて人の形になった。見覚えのあるスキンヘッドで全身タトゥーの大男だ。
「ナオト!」
ナオトだった。あたしが死ぬ一年前に死に別れた彼氏だ。
「おお! レイコじゃねえか! 久しぶりだな! 元気にしてたか?」
ナオトはもともとヤクザだけあって、地獄に適応できているのか、道端で会ったかのようなリアクションをした。
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