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「実の母親を殺したんだな。親殺しは罪が大きいらしいからそりゃ無間地獄行きだな」
ナオトが言うと、シュウが頷いた。
「なんでそんなことになったの。」
あたしは聞いた。
「お母さん、ずっと寝たきりのおばあちゃんの世話をしてたんだ。お父さんはいつも忙しくて、あんまり家にいなかった。ある日ね、僕が家に帰ったら、おばあちゃんが死んでて、お母さんは行方不明になったの。周りの人は、お母さんがおばあちゃんを殺して逃げたって言ってたけど、僕は信じてなかった。いつか、帰ってきてくれるって、信じてた。だけど、お母さんは、近くの森で首を吊って死んでたんだ。お母さんの近くに手紙があって、おばあちゃんを殺したって書いてあったの。」
そこまで話して、シュウは泣いた。殴られても焼かれても串刺しされても泣かなかったのに。
「僕、もう一度お母さんに会いたい。」
「そうか、介護疲れってやつだね。おばあちゃんを殺してようが、あんたにとってはいいお母さんなんだね。」
シュウは頷いた。
無間地獄行きの階段は、すぐに見つかった。今までと違ってすごく大きくわかりやすい場所にあったからだ。階段の門番の鬼が話しかけてきた。
「この先に行けるのは、シュウだけだ。ナオトとレイコはこの先に行けない。」
「ええ!?」
「この階段は、無間地獄にいる人間の身内しか通れない。」
「そんな、この先シュウ一人なんて・・・」
無間地獄への階段は、今までと次元が違った。階段の上にびっしり針があって、壁から槍が飛び出している。階段の長さも果てしなかった。
「シュウ、本当に行くの?」
シュウは頷いた。シュウの気持ちは変わらないらしかった。
「ねえ、鬼さん、僕が無間地獄に行けばお母さんは無間地獄から出られるんだよね。」
「ああ。身内が迎えに行ってやれば、無間地獄から引き上げられる。行ってやれ。お前の母親は、地獄の果てで、待っている。」
「わかった。レイコ、ナオト、今までありがとう。」
シュウは、階段へ向かった。
「シュウ!絶対無間地獄からお母さんと一緒に出てこいよ!待ってるからね!!」
あたしが叫ぶと、シュウは頷いて、階段を降りていった。
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