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クリスマス・イヴの朝、街にはすでにどこか浮ついた空気が流れ、来たる聖夜に向け往来する人々の高揚感は徐々に増し始めていた。しかしその街角に、そんな雰囲気に似つかわしくなく何やら不穏な様子の一組の男女がいた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。今日はクリスマス・イヴって知ってる?こんなタイミングで別れたいってどういうこと?」
女は信じられないという目で男をじっと見つめた。
「ごめん、…だから、他に好きな人ができたんだって」
男は目をそらし、今一度言ったばかりのセリフを後ろめたそうに繰り返した。
「もう、昼から相手と約束もしてるし…本当にごめん、あかり」
そう告げると、男は足早に都会の喧騒の中へと消えていった。
「ま、待ってよ…。待って!」
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