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葡萄
病室の扉を勢い良く開け目に入るのは愛おしい俺の弟
「千秋!!」
「…和兄、お仕事は?」
「千秋が襲われたって聞いて慌てて会社早退してきた。けど、何ともなさそうじゃないか、よかった…」
何も変わっていない千秋の姿に安堵の溜息を吐き椅子に座る
「あのね、和兄」
「なんだ。どうした?」
「……僕の目、もう、見えないんだって。」
「なん、だって…?」
「襲われた時に顔によく分からないスプレーをかけられて、お医者さんが言うにはそれが原因じゃないかって…手術しても治る見込みが、ないっ、て…ぐす、うぅ…」
「千秋…」
顔を覆い泣き出してしまった千秋を優しく抱き寄せる
「大丈夫だ。これからは俺が千秋の目になってずっと傍に居てやるから」
俺の言葉に泣きながら何度も頷く千秋の頭を優しく撫で俺は密かに…笑みを零した。
「(やっと手に入った。俺だけの千秋。愛おしい俺だけの…)」
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