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枯れた港街
一年を通して冷たい潮風が吹き抜ける湾口都市ーそれがサルザであった。鉱山から採掘した魔鉱石を輸出して得た多額の資金を背景として長らく独立を保った都市であったが、約五十年前に戦争によってマクウェルズの版図となり、植民地状態となっている。
魔鉱石とは、魔素を溜め込む性質を持った石の事で、それを使用する事により自分では行使できなかった魔術を使う事も出来る。
嘗て大きな富を生み出した鉱山もマクウェルズに支配され、採掘するのはサルザの人間でもそれを扱うのはマクウェルズの人間だ。活気に溢れていた町は鬱屈とした空気となり、栄華の証であった豪奢な装飾品も今は失われていた。
在りし日を懐かしみ、違法な薬に手を出す者も多い。治安はどんどん悪くなっていった。
冷たく、美しい海は何も変わらないのに、人も、町も階段を転がり落ちていくように、醜悪なものに成り下がっていく。
美しきサルザ。それは最早、人の記憶の中にしか無いのだろう。
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