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胃が焼けて、こみ上げるものがあって咳き込んだら、なんだか赤黒いものがついた。とうとう胃に穴でも開いたらしい。
「くそ、軟弱精神。病弱マーロウをバカに出来ないじゃないか」
床に倒れて動ける感じがない。でも、意識はちゃんとしている。気持ちは悪いけれど。
その時、バタバタと走り込んで来る体重の軽い誰かの足音がして顔を上げた。
「キアラン!!」
「ウェイン?」
駆け込んできた小柄な影を見て、キアランは表情を緩ませる。前線で生死に関わる怪我をしたと聞いていたから、心配していたが安心した。元気そうだ。
「うわ! 大丈夫? また胃に穴でも開いたの?」
「多分。さっき、殴られた……」
「すぐ医務室運ぶから!」
「いや、お前怪我してるだろ……歩く」
ふらつきながらも立ち上がったけれど、まだ気持ちが悪い。肩を貸してくれるウェインの方がよほど元気だ。
「遠慮しないでよ。同期なんだからさ」
「……」
それが余計に感傷に触るということも、あるのだけれど。
やがてアシュレーも来て、担がれて医務室に放り込まれた。そしてリカルドによって治療されている間に、気も抜けてすっかり眠り込んでしまった。
目が覚めると外はすっかり暗く、胃は痛んだが、こみ上げるような吐き気は収まっていた。
「目が覚めましたね。気分は?」
「胃が痛い、です」
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