379人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
上官シウスが宰相府では異例だ。自衛がギリギリというレベルの宰相府において、あの人だけは戦場で戦える騎士でもある。鋭く細密な剣は観察眼の鋭さもあって的確に無力化ができる。
だが現状、情けなくて笑えてくる。地に這いつくばって尻餅状態で、男達を見上げているのだ。
「武器庫の鍵を渡せ」
「断る!」
そう言いつつ、キアランは胸の隠しを握った。それを見た黒服達が、ニッと笑った。
奪うように四肢を掴まれ、声を上げれば殴られる。抵抗して、体をばたつかせても無駄だ。あっという間に胸元の隠しから銀色の鍵を奪い取られてしまう。
「まったく、手間をかけさせるっ!」
「ぐっ!!」
手間を掛けさせられた腹いせなのか、それともただの加虐か。最後に鳩尾の辺りを力一杯拳で殴られたキアランは呻きながらこみ上げる嘔吐感を堪えきれず吐き出した。
とは言えここ数日現状に胃をやられていてほぼ食べていなくて、出てくるのは胃液ばかりだったが。
「情けない騎士もあるものだ!」
嘲笑しながら武器庫が開けられる。ここには主に武器と、そして火薬が置かれている。海軍が使う大砲の火薬の多くはここに運ぶし、危険物の為押収したものなどもここに保管される事が多い。
現在、数十トンの火薬がここにある……はずだった。
「暗くて見えないな」
「火は使うなよ」
「窓を探せ」
最初のコメントを投稿しよう!