379人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
中にゾロゾロと入っていく黒服達が全員中に入り、窓の開閉レバーを見つけて下ろそうとしている。だが、レバーは硬くなかなか下りない。そっちに意識が集中しているのを確認して、キアランは急ぎ立ち上がりドアを閉め、ドア横のレバーを下ろした。
「なっ!!」
ガチャンガチャンと派手な音がして、ドアは二重にロックがされる。このドアは特別式で、強い鉄の閂が上下二本ずつできるようになっている。通常の鍵ではなくドアのレバーを下ろす事でこのロックはかかるのだ。
「開けろ!!」
「誰が、開けるか……」
殴られて痛む腹を庇い、頑丈な石造りの武器庫の壁に手をつきながらもキアランは離れた場所にある小屋に入り、車輪を回す。この小屋には釜があり、その煙突部分は武器庫に繋がっている。キアラン特製の、対侵入者対策だ。
「良い夢を見られるといいな」
釜に火を入れ、鉄のドアを閉める。すると煙がドンドン武器庫へと流れて、やがて充満していく。釜の中の水には睡眠効果があり、これを煙として流すのだ。
更に武器庫の一番下にはほんの僅かな換気口があり、中の人間を窒息させない程度に保っている。
「はぁ……」
ズルズル床にヘタレ込んだキアランはまた何度か咳き込む。腹は痛いし、胸は焼けるし、気持ちは落ち込むしで散々だ。この道を選んだのはキアラン本人だが、選びたくて選んだんじゃない。生存確率を取ったにすぎないんだ。
「くそ、格好悪い……どうして俺はこんなに弱いんだ……」
最初のコメントを投稿しよう!