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「シウス殿。一度ばかりか、二度も救われましたわ」
近づいてきたシウスに、イシュクイナはダンの腕から抜け出して礼を取る。シウスは鷹揚に頷いて、彼女の無事を喜んだ。
「私の部下が、大変な損害を貴国に与えてしまったことをお詫び申し上げます。ですが、既に我が国は滅び何も差し出せるものはございません。かくなる上はこの命をもって償いますわ」
「その必要はない、姫。其方のせいではない。それに、其方の命をなどもらい受けられぬよ。今からでも、その武力を貸して頂けると幸いじゃ」
「そのくらいのこと、お安い御用ですわ」
ニッコリと笑ったイシュクイナは、次にアルブレヒトにも目を向ける。そして、丁寧に頭を下げた。
「貴方の事も、チェルル達から聞いています。私は貴方こそがジェームダルの真の王として立つことを望みます。微力ではありますが、お力添えできれば嬉しいわ」
「有り難う、ラン・カレイユの王女よ。貴方の力、頼りにさせてもらいます」
互いに穏やかに微笑み合ったイシュクイナとアルブレヒトを見て、これでようやく事がおさまりそうだとファウストも安堵の息をついた。
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