お母さん、あのね

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電車やバスをタダ乗りしまくった後(タダっていいよね)、三週間で日課になりつつある公園のベンチから人間観察をしていた。  今日は夏の割に涼しく子供と大人がたくさんいた。その中にとびっきり可愛い黒髪ロングの女の子を見つけて、ずっと視線で追い続けてた。  まあ偶然だろうけど、ずっと見てたからか女の子があたしを見た気がした。  見えていないのに目があった気がして、ぐりんとあからさまに顔をそらした。体がないので動悸を打つことはないが、あったとしたら早鐘のように打ってたと思う。  なんでか分からないけどそれくらい動揺していた。 「おねーちゃんどうしたの?」  声にならない声をあげて、飛ぶ勢いで立ち上がった。 『みっみっみみみ見えるの? あたしが?』  叫んだ後で思わず口を押さえた。意味もなくキョロキョロと辺りを確認する。 「うん。そこにおねーちゃんいるよ?」  それが? というように少し首を傾げて純粋そうな真っ黒な瞳に吸い込まれて消えてしまいそうな気がした。 
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