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「むかし、ここいらにはな。ニンゲンなんかより、ずうっと大きな鳥がバッサバッサと何匹も飛んでたんだ」
体の大きな猫が言った。
太いしっぽがゆらゆらと揺れている。
子猫のライはそれに飛びつきたくて仕方がなかったが、我慢するしかない。これに飛びついたら怒られる。
「ほれ、すぐそこのな。そこにある鳥居。羽を広げるとあれよりもはるかにでかい」
「ほえええ……そんなにでっかいんだ」
ライは背後を振り返り、横に二本の棒を縦二本の棒で支えている大きな木の作り物を見た。そのはるか上には丸い月が浮かんでいる。天気のいい夜だ。
そんなに大きな鳥なら、空の月も簡単に啄んでしまいそうだ。
「そうだ。あれは、止まり木よ。そのでかい鳥がいるから、鳥居と言うんだ」
「すごい、ロン爺は何でも知ってるね!」
ライは生まれてからまだ5回くらいしか丸い月を見たことがないのだが、ロン爺はもう数えきれないほど見ているという。
長い長い時を生きてきた、ロン爺は何でも知っている。
「おうおう。そうとも。俺はこの神社の下に住んでるキョウジュと言うやつの話をたっぷりと聞いているからな。知らんことはない」
ロン爺の太いしっぽが石畳の上をゆらゆらと揺れ、ライはたまらずじゃれついた。
「すごいすごい!! 知らないことがない!!」
ロン爺は何でも知っている。本当にすごい。
嬉しくなってじゃれていると、ぺしりと前足を叩かれた。
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