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犬とも烏とも会話ができる。会話ができないのはネズミくらいだ。
「さあな。俺にはやつらの罪は分からん。だがな。ここに逃げてきた大きな鳥は、俺が全部やっつけた」
「ええっ!! そうなの?」
ロン爺はこの辺りでは一番体の大きな猫だ。
それでも、あの鳥居と言う大きなものの横幅よりも大きな鳥をやっつけるなど、並大抵のことではない。
しかも言葉を奪われるような大きな罪を犯したのだ。
きっと、途方もなく凶暴に違いない。
「すごい……ロン爺」
ライはキラキラとした目でロン爺を見た。
いつも神社でごろごろしている姿しか見たことがないが、実はすごい猫だったのだ。
「いい加減になさい、ロン爺。鳥居よりでかい鳥? そんなもの、いるはずがなかろうよ」
「うわあ! と、鳥居がしゃべった!!」
腰が抜けそうになる。
思わずロン爺の背中に回り込むと、目の前に音もなく黒い影が降り立った。
「ライ、お前、猫だろう。ちゃんと見なさい」
月の明かりの下、ゆらりと細い影が動く。
金色の瞳が光った。
「レン」
見知った猫の姿に、ほっと胸をなでおろす。
「いたいけな子猫をだますのは感心せんよ、ロン爺」
「騙しちゃおらんぞ。俺は偉大なる猫だ。世界の平和は、俺が守っていると言っても過言ではない」
いうが早いかロン爺は素早く横に跳び、石畳に爪をたたきつけた。
いや、石畳ではない。
ロン爺が爪を振るったのはネズミだった。
「このネズミはな。途方もなく悪いやつなんだ。だから言葉も通じない」
「ライ。だまされてはいけません。ロン爺は確かにネズミ捕りの名猫(めいじん)ですが、それでもこの鳥居より大きな鳥を捕まえられるわけがないでしょう」
全く、困ったものだとため息をつく。
ロン爺が嘘をついているとは思っていないが、レンも嘘つきだとは思っていない。
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