プロローグ

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プロローグ

(土の色が変わってる……)  校舎寄りの、野球部のグラウンドの一部だ。  花壇の水が染みだしているのだろうか。  もしかしたら、歩いている人からは見えにくいかもしれないが。  上からはよく見える。  俺が落ちたところ。 (どうしてこんなことになったんだろう……)  はじめはよかったのに。  いつも優しくて、楽しかったのに。  大きな体を揺らして笑う先輩が好きだった。嘘みたいな早さでパンを食べて、指を舐める仕草が好きだった。  階段を駆け上がる足音を、いつも待っていたのに。 (あんなことのために、俺に近づいたの……?)  つらくて悲しくて。  苦しくて痛くて、怖くて。  恥ずかしくて  消えてしまいたかった……  グラウンドでは、今日も野球部が練習している。  大きな声、バットがボールを打つ音、舞い上がる砂ぼこり。  そこに、先輩はいない。 (どうして、いないのかな……?)  あれからどのくらい経ったのだろう。  自分はいつからここにいたのか。  なぜ?  なんのために?  ふと見下ろすと、広いグラウンドのほぼ中央に、スーツ姿の男が立っていた。朝日を浴びて、土の上に長い影ができている。  彼はまっすぐに、こちらを見上げていた。 「先輩……?」
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