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君に心臓を持っていかれたあの日から。
わたしは何度も出会いと別れを繰り返し、君を待っている。
君との出会いも5回目を迎えようとしたとき、わたしは君と出会わない様にしようかとすら思った。
だって君は必ずわたしの前から姿を消すのだから。
それでも君は何ごともなかったかのような顔で現れる。
始めましての顔をして、現れるのだ。
5回目の時は泣き出してしまって本当に悪かったと思うよ。
でも、困惑しつつも背中を優しく擦ってくれた手の温かさがあまりにも心地よくて、幸せを思い出した。
結局君から逃げられないのだと、ようやくその事実に気づいてしまった。
それからまた、別れを迎え、何度も何度も君を待つ。
君の魂がわたしを探すのか、わたしが君を待っているからなのか、国を変え、場所を変えようとも君は必ずわたしの前に現れる。
「わたしは、何度も君と出会っているんだよ」
もうすぐ眠りにつきそうな君に、声を掛けた。
君とっては出会った時と変わらない、わたし。
君が緩やかに歳を取って眠りにつくその時まで傍に入れたことが、本当に嬉しかった。
目じりに皺をよせ、柔らかく笑った。
「じゃあ、またあなたを探しに来ます」
それから幾ばくかの時を重ね、新しい住処に居場所を移し、しばらくした頃、君の気配がした。
きっと君とまた出会える、そんな気がしたのだ。
木々に囲まれたこの家は、葉の擦れる音が暖かくて好きなのだ。
ざぁざぁざぁ……あぁ、何度でも君を待とう。
「こんにちは!」
姿かたち変えようとも、君の魂は決して変わらない。
わたしは柔らかく微笑み、君を何度でも歓迎しよう。
―FIN―
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