第四章 恋なんてもうしないと思っていたけれど

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◆ 「……うう、さむっ!」  外に出た瞬間、冷たい秋の風に首筋を撫でられて私はその場で身震いした。  家を出る前にテレビから流れていた天気予報では、今日は冬のような寒さになると言っていたのを思い出す。すぐそこのコンビニに行くだけだからと、防寒対策もしないで出てきてしまったのを私は少しだけ後悔した。 「へへ……でもこれで……勝てる……ふふ」  身震いしたときにズレた眼鏡の位置を直して、人目も憚らずにニヤける私の手には白いビニール袋。中身は二人分の飲み物とお菓子、──そして課金カードだ。  オタ充するために取った連休も、三日目の半分が過ぎようとしている。  昨日は昼過ぎまで寝てて、そのせいかすごくすごく身体がだるかったんだけど、身体に鞭打って遅れを取り戻すためにイベント周回頑張っちゃいました。  マルスも初日のように私を叩き起こしもせず、一日おとなしかったし。  それに、()質にされていたはずのスマホは何故か私の枕元にあった。 (なんか変だよなぁ……)  スマホ(推し)が無事に帰ってきたのはいい。でもそれと入れ替わるかのようにマルスの勢いが間違いなく萎んでいる。
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