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そんなこんなでアパートまで徒歩約十分。帰ってきた私を迎えたのはマルスの熱烈なハグだった。
「こんなの、……こんなのってないわよぉおお! グズッ」
しかも何故か号泣してる。
だけど、彼が泣いている原因が帰ってきたばかりの私に分かるわけがない。
困惑、ここに極まれり。
──ていうか力強いな!?
「まるっ、まるす! ちょ、苦しいっ」
私をぎゅうぎゅうに抱き締めて『うぉおおおん』と泣くマルスの肩をばしばし叩くけど、その力が緩むことはない。
マルスが着ている私のルームウェアはもこもこで肌触りはとても気持ち良いんだけど!
前にも言ったけど、私が住んでいるアパートの壁はそんなに厚くない。
しかもここは玄関。これ以上泣かれたら近所迷惑になっちゃう。ついこの前もドタバタやって注意されたばかりなのに!
ここは私が冷静になって彼を宥めなければ────!
「まるす! おち、落ち着いて!? ねぇ、落ち着こう!?」
「うっうぅ、落ち着いてなんかいられないわよぉ!! どうして、どうしてこんな悲しいことがあるのぉぉおおいおいおい……っ」
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