第四章 恋なんてもうしないと思っていたけれど

6/16
前へ
/100ページ
次へ
 そんなこんなでアパートまで徒歩約十分。帰ってきた私を迎えたのはマルスの熱烈なハグだった。 「こんなの、……こんなのってないわよぉおお! グズッ」  しかも何故か号泣してる。  だけど、彼が泣いている原因が帰ってきたばかりの私に分かるわけがない。  困惑、ここに極まれり。  ──ていうか力強いな!? 「まるっ、まるす! ちょ、苦しいっ」  私をぎゅうぎゅうに抱き締めて『うぉおおおん』と泣くマルスの肩をばしばし叩くけど、その力が緩むことはない。  マルスが着ている私のルームウェアはもこもこで肌触りはとても気持ち良いんだけど!  前にも言ったけど、私が住んでいるアパートの壁はそんなに厚くない。  しかもここは玄関。これ以上泣かれたら近所迷惑になっちゃう。ついこの前もドタバタやって注意されたばかりなのに!  ここは私が冷静になって彼を宥めなければ────! 「まるす! おち、落ち着いて!? ねぇ、落ち着こう!?」 「うっうぅ、落ち着いてなんかいられないわよぉ!! どうして、どうしてこんな悲しいことがあるのぉぉおおいおいおい……っ」
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加