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(……あ、この感覚)
すごく美人な見た目に対して、意外とがっしりとしたマルスの腕。相も変わらず彼が着ているルームウェアが私よりも似合っているのが悔しいけど。
ふわふわと記憶が私の頭に蘇る。おぼろげな中で唯一覚えているもの、それはきっとこれだ。
「怖かったわよね、ごめんなさい。アタシがアナタの気持ちも考えずに、ついていくって決めたからあんなことに……」
「……でも、マルスが助けてくれたんでしょ? 私を抱えて……なんとなく、それだけ覚えてる」
「アタシにあんなものが効くワケないもの。あの二人ってば相当驚いていたわ」
「……もしかして、あの雄々しい声も……?」
「それは気のせいね」
いや絶対嘘でしょ。
でもそれは言わなかった。マルスが赤ん坊をあやすかのように私の髪を撫で始めたから。
「……女の子に怖い思いをさせるなんて。アナタに幸せな恋を運んであげるって言ったのに。アタシが堕天使だったから助けられたけど、アタシが堕天使じゃなかったらと思うと……本当にぞっとするわ。だから本当にごめんなさい、モトコ」
「……もう、いいよ。謝らなくて。今こうして無事でいるんだしさ」
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