第四章 恋なんてもうしないと思っていたけれど

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 だから、あの日一緒になって笑う声を聞いたとき、やっぱりなって思ったんだ。彼と私は住む世界が違うのだと。  それでもちょっぴり信じていたんだ。分け隔てなく誰にでも笑いかけてくれる人だから、私の世界を嘲笑(わら)わずに一緒になって笑ってくれるんじゃないかって。  なんだかんだ言いながら、いつか彼と──なんて儚い夢を見ていたんだよね。  私だって年頃の女の子だから、恋に夢くらいって(いだ)くよ。  そうじゃなかったら、住む世界が違う人だからってことを言い訳にすっぱり諦めてまた別の誰かに恋をすることができた筈だ。  それが、あの日のことが今でも抜けない棘となって残っているのは、苦い形で終止符を打たれた恋のカケラがきっと残っているからかもしれない。  あの日あの瞬間バリーンと弾けた恋心は本物で、淡くだなんてかわいいものなんかじゃなくて私は本当に恋をしていたのだから。  ────していたからこそ、あの日見た彼の表情が今でも忘れられないんだ。
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