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翌朝、私は重たい頭を抱えて起きた。
あの犬が夢の中にまた現れたのだ。
昨日のように、餌をやり忘れた私はボロボロの犬に餌を出す。
犬は私に恨みの篭った視線を向けながらがつがつと餌を丸呑みした。
そうして全て餌を平らげてもまだ足りないようで、私にもっと食事を持ってこいと要求する。
私は家中を探すが、犬の食べられそうなものなのどこにもなく、仕方なく持っていたナイフで私の指を切り、差し出した。
犬はそれを喜んで食べて、もっとよこせと吠え立てる。
泣きながら犬に腕を、足を、内臓も差し出した所で夢は終わったのだった。
五体満足でいられる自分の身体が心底有難く、指の腹で全身をさする。
そして夢から覚めきっていない頭の靄を振り払うように顔を撫で、無理やり身体を起こして着替えることにした。
登校途中、住宅街を抜けた一本道を自転車で飛ばしていると、視界の端に、住宅の垣根に掛けられている薄汚れた布切れが目に留まった。
普段なら見向きもしないそれをつい目で追った。
その布切れが、夢の中の犬に重なったのだ。
泥交じりの汚物や乾いた血にまみれたあのおぞましい生物を思い出して、喉の奥から胃酸がこみ上げてくるような不快感を覚えた私は、無理やり思考を切り替えて学校へ向かった。
「おはよ」
「おう。お前、どうした」
森田は私の顔を見るなりそう言った。
「何が」
「顔色悪いぞ」
「多分、眠りが浅かったから」
「そうか。辛かったら保健室行けよ」
森田は多くを詮索せず、私の体調を気遣うだけに留まってくれた。
その日、三時間目までは何とか授業に出席出来たのだが、それ以上は限界だった。
早退の許可を貰った私は、昼前に下校した。
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