1.それぞれの日常

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 ◇ ♂ 「--は……ッ!!」  思わず息を飲み、叫び声を上げていた。  視界に広がるのは薄暗い自室の天井。嫌と言うほど見慣れた風景だ。  息が荒い。全身の血が駆け巡り、ばくばくと心臓が暴れまわっている。  僕は言い知れぬ不安に眉根を寄せた。  体は伸びきったバネみたいに硬直し、冬には珍しく酷い寝汗をかいていた。 「またか」  不意に泣きたくなるような衝動に駆られ、両手で顔を覆う。原因は分かっていた。  また《あの別れの夢》にうなされたのだ。  《彼女》が砕け散った硝子(がらす)のように、目の前から消えて無くなる悪夢。  一つ二つと深呼吸し、未だ疲れの取れない上体をゆっくり起こした。自然と溜め息がもれる。
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