誘いの手

1/6
前へ
/21ページ
次へ

誘いの手

「ねぇ、ミナ」 「えっ。…あっ、アキ…」  ミナの顔が一瞬曇った。  今時のギャル風の女子高校生二人が、ミナに近寄ってきた。 「何よ、どうしたの?」  ミナは声を潜め、構える。 「冷たぁい。何、その態度ぉ」  チャラけた声に、ミナの眼がつり上がる。 「…やめてよね。アンタ達との付き合いは、終わったんだから」 「ひどっ~い。ヤダね、ユマ」 「うん、ヒドイよミナ。中学時代、あんなに仲良かったのに」 「…うるさいなぁ。言いたいことがあるなら、ハッキリ言って。マカが戻ってきちゃう」  今は放課後。  教室の掃除当番だったミナと、日直だったマカ。  ミナは掃除中で、マカは日誌を担任に渡す為に教室を出て行っている。 「マカ、ねぇ。あんなのと付き合ってて、何が楽しいの?」  アキが鼻で笑うように言うと、ミナの眉間のシワが深くなった。 「マカの悪口を言うな。それより用は何なの? 早く言ってくれないと、ムシするけど?」 「あっ、そうそう。今晩、ヒマ?」 「ちょっとしたお遊びするんだけど、ミナも参加してよ」 「クラブなら行かないし、合コンもしない」 「違うって」 「そんなんなら、ミナ誘わないって」  二人の笑い方に、ミナはホウキを持つ手に力を込めた。  早くしないと、マカが戻ってきてしまう。  こんな二人と一緒にいるところ、ホントはクラスメートにだって見られたくはない。 「学校の隅に、プレハブ小屋あるでしょ?」 「あそこでちょっと遊ぶんだ。大丈夫、どっちかって言えば、ホラー系だから」 「肝試しみたいなもの?」 「そうそう! それで夜の七時に、学校の門の前に集合ね」 「遅れちゃダメだかんね」 「って、ちょっと!」 「後一人、誘わなきゃいけないから」 「じゃ~ねぇ」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加