2人が本棚に入れています
本棚に追加
(電話ボックス…ワンピースとデニムのジャケット、ね)
翔太はスマートフォンから目を離し、駅前をざっと見渡した。駅舎を左に曲がる角に電話ボックスがあり、そばに誰かが立っている。
その服装は、マイコのメールにあったものと同じだった。
(あれか…ん?)
翔太は、首をわずかに前へ伸ばす。彼女が何か長いものを持っており、それが何なのか気になったのだ。
2秒ほど凝視すると、彼はその正体に気づく。
(おいおいおい…!)
素早く駅舎の中に戻り、電話ボックス方面から見えないように隠れた。
壁に背をつけた彼は、悔しげに歯噛みする。
(杖なんか持ってやがる…! やらかした!)
翔太は、決断をしくじったと後悔した。マイコが持っていた長いものとは、松葉杖だったのだ。
(しかも帽子かぶって、グラサンとマスクで顔隠してやがる…怪しさ大爆発じゃねーかよ、くそぉっ!)
壁から背を離し、そっと陰から顔を出す。電話ボックス方面をもう一度見た。
ここで彼は気づく。
(あれ…?)
電話ボックスから少し離れた位置に、ベンチがある。
そこには誰も座っていない。
この駅前には人通りがほとんどないため、誰かが座りそうな雰囲気もなかった。
(足が悪いんじゃないのか? なんで座って待たないんだ…?)
最初のコメントを投稿しよう!