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「えっ?」
「マイコちゃん、完全武装だから」
翔太はそう言って、彼女の帽子とサングラス、マスクを順に指さしていく。杖に関しては、まったく言及しなかった。
「あっ…ふふっ」
軽口に意表を突かれたのか、マイコは小さく笑う。
だがすぐに、顔を隠していることを翔太に謝った。
「ご、ごめんなさい…こんな格好で」
「わかる。わかるよー緊張するよね。オレもドキドキしちゃって、メールもらった時は思わずオタオタしちゃったから」
「お、オタオタ?」
「うん。マイコちゃんどこかなーってキョロキョロしたり、見つけたら余計ドキドキしちゃってちょっと隠れちゃったりさ。いやー、お互い緊張しぃはつらいよね。あーつらい」
「え…あははっ」
マイコは再び小さく笑う。緊張が少しほぐれたようだ。
ただ、ほぐした張本人は、今もまだ明るい気持ちにはなれない。彼は、杖とその先端近くにあるスカートの裾を見ていた。
(なんだ…これ)
彼女の足首まですっぽりと覆うほど長いワンピースの裾からは、ヒールの高さがほとんどないグレーのパンプスが見えている。
だがそれは左足だけだった。
(右足が…ない!)
マイコは、ただ足が悪いわけではなかった。
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