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「…ひゃっ?!」
突然、誰かに押されて信号のほうに転んだ。
赤信号が、夜の闇の中、はっきり見える。
その時。
轟音を響き渡らせて、バイクが近づいてくる気配がした。
ほんの一秒の出来事が、何分にも感じられる。
「…っ彩花!」
どんっと突き飛ばされて、今度は違う場所に転がる。
「痛っ…。」
膝やひじから出る血が、アスファルトに滲んでいく。
ああ……今頃…私が…朔の手をにぎっていれば…。
はぐれずにすんで…。
月が綺麗だねって…笑って…。
それからも、幸せに…ずっと、幸せに過ごして…。
朦朧としていく意識の中で、朔の笑顔がぼんやり浮かんだ。
…ドサッ
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