third moon

9/13
前へ
/113ページ
次へ
「…ひゃっ?!」 突然、誰かに押されて信号のほうに転んだ。 赤信号が、夜の闇の中、はっきり見える。 その時。 轟音を響き渡らせて、バイクが近づいてくる気配がした。 ほんの一秒の出来事が、何分にも感じられる。 「…っ彩花!」 どんっと突き飛ばされて、今度は違う場所に転がる。 「痛っ…。」 膝やひじから出る血が、アスファルトに滲んでいく。 ああ……今頃…私が…朔の手をにぎっていれば…。 はぐれずにすんで…。 月が綺麗だねって…笑って…。 それからも、幸せに…ずっと、幸せに過ごして…。 朦朧としていく意識の中で、朔の笑顔がぼんやり浮かんだ。 …ドサッ
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加