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今日は…7月、14日。
私の、十三歳の、誕生日…。
「んーっ!」
軽くのびをして、カーテンを開けた。
今日はなんだか、体も軽いし、気分も絶好調。
そんな気分のまま、リビングに降りる。
「おはよ、彩花。」
「おはよう!お母さん」
お母さんが作る卵焼きの甘い匂いが、部屋に広がっている。
トースターからパンを取り出すと、ブルーベリージャムをつける。
そして、テレビをつけた。
『今日の夜は、スーパームーンが見られるようですね…。』
『今年は、前年より、更に大きく見えるそうですよ。』
テレビでは、スーパームーンの話題でもちきりだ。
「彩花。誕生日の日なのに、夜遅く帰る事になって、ごめんね。パパも、出張だし…。」
「いいの、お母さん!」
お母さんもお父さんも、仕事で忙しいんだから。
それに、今日は…。
笑顔の私とは反対に、お母さんは浮かない顔だ。
「あ、やっば!もうこんな時間!行ってきまーす!」
バタバタと走って出ていく私を、お母さんはまだ心配そうな瞳で見つめている。
「お母さん。分かってるよ。今日で、私の運命が変わるんでしょ。」
「あんまり、無茶はしないのよ。」
「うん!」
そう。
今日で、運命は、変わる…。
この時の私は、お母さんの浮かない顔の理由にも、
ましてや運命がこんな方向に進んでしまう事も、
知らない、純粋無垢なままの、私だった。
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