その花は一凛の白き花となり、咲き誇る

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 私の姿を見たこと。  楽器を持ってここまで来てしまったこと。  そして――私との“お別れ”を察した彼は悲しむような表情をしながらも。  けれど、その場に座り、琴を構えた。 「曲はいつもやっていた奴でお願い。出来るでしょ? まさか憶えていないなんて言わないでよね」 「……任せろ。お前との曲はバッチリ憶えている」 「そう。――だったら、さあ――私の最後の舞いをアナタに、ただ一人の人の為に捧げ、披露しましょう!」  私は両手で三回手拍子をする――それがいつもの合図だからだ。  その合図が終わった後――彼の演奏が始まった。  彼の演奏が始まったことで、私は砂に変わりつつある自身の身体で舞い踊る。
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