煙の向こうに見えたのは

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(父さんって、正反対な人と再婚したんだな) 「叔父さん、最近はどこ旅してたの?」 「この前は、アメリカ」 「アメリカ? 前も行ってたよね」 「今回は、中西部をバイクで走って来た。最高だったぞー」  叔父はにっかり笑って、土産話を披露する。  駿も畳に座って、彼の話に耳を傾けることにした。  どこまでも広い空に、果てしない道。少し寂れたドライブスルーで食べた、巨大なハンバーガー。夕陽に照らされた、武骨な岩々。  話を聞いているだけで、目を閉じるとその光景が浮かびそうになる。 「ネイティブ・アメリカンの居留地にもお邪魔してな。長老とも話したぞ。初めは警戒されたんだが、いつの間にか大歓迎よ」 「叔父さん、すごいな」  叔父のすごいところは、こういう面だ。見知らぬ土地に行って、友達をたくさん作って来てしまう。  世界中を旅していられるのは、世界中に作った友達がいるからだと叔父は自慢する。  ちょっとヨーロッパに行きたいな、と思ったらドイツ人の友人に連絡を取って。ちょっと南米に行きたいな、と思ったらブラジルの友人に連絡を取って。現地で仕事を紹介してもらって、旅費を稼いだりもするという。  友人作りが得意とは言えない駿にとって、叔父は眩しい存在だった。叔父の生活はとことんふらふらしているけれど、世界中に友人がいるなら何があっても困らないのではないだろうか――と、駿は考えていた。
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